みんなの学級新聞

日々の生活

中学生にスマホを持たせる際の約束事

 小学6年生のお子さんが「スマホを持ちたい」「みんな持ってる」「持ってないとハブられる」「お母さんは自分の子どもがいじめられてもいいの?」「悪い人に襲われたときどうしたらいいの?」と言ってきたら、どう返答しますか?

 

 今回の記事は以下をテーマに書いていきます。

  • 中学生のスマホ所有率
  • 無料通話型アプリSNS利用により巻き込まれる問題
  • 家庭内での決まりごと
 

 冒頭にある"子どもの脅迫"、これは馬鹿になりません。親の弱みに付け込んだ、非常に恐ろしい作戦です。もちろんこれはお子さんが考えた脅迫ではなく、すでにスマホを持っている友だちからの入れ知恵です。親なんてちょろい、と教室では笑っています。

 

中学生のスマートフォン所有率

 これは地域の実態にもよりますが、平均的に中学一年生で30%ほどです。ですが、タブレットを含めると約60%にまで跳ね上がり、SNSや無料通話型アプリのアカウント所有率となると約75%となります。中学三年生となると、92%にまで及びます。ほぼ全員が何らかのネット上の繋がりを持っていると言えます。

 そう、LINE等の無料通話型アプリは、スマートフォンではなくPCからでも利用する事ができます。もはや利用禁止を呼びかけるのは無駄で、有効利用や適切な利用法を呼びかける方が建設的です。私のクラスにも、もちろんグループがあります。20人近くが参加しています。私は見る事ができませんが、スケジュールや持ち物の確認等のポジティブな情報が飛び交っているそうです。悪口は別グループ内で行なわれていることでしょう。

 

SNS利用で巻き込まれる問題

 一番問題になっているのが、身体のパーツを写した写真のアップロードです。どんなに注意喚起しても止まりません。友だちと遊びに行った時の集合写真はそこらじゅうで見つかります。ここで怖いのが、自分の写真ならまだしも、友だちが写っている写真も無許可でアップされてしまう点です。

 マナー違反とかそういう話ではありません。プライバシーの侵害です。具体的に言えば、複製権(著作権法21条)、公衆送信権(同法23条)、同一性保持権(同法20条)の侵害に当たります。犯罪です。

 ですが、教室規模でいうと「なんで私が行ってないところにあんたは行ってるの?」「なんで誘ってくれないの?」「これっていじめじゃない?」となり、その後予想される展開としては保護者が学校に相談してくる事となります。娘がいじめられています、と。

 それだけでなく、誘われなかった仕返しとして、その子の写真を無許可で拡散してしまう事例もあります。個人グループから教室グループへ、面白がった誰かが部活グループへ。そこから塾グループへ、さらに他校のグループへ...。もう止まりませんし、消せません。

 

 適正利用を全校集会や特別活動で呼びかけても。県警の方を招いてどのような法律に違反し、どのような処罰を受ける事になるかを説明しても。どのようにして調査され、明るみに出てしまうのかを説明しても、このような事例はなくなりません。

 今の子どもは昔と違い、損得で動きません。快不快で動くことが増えています。おそらく情報やレスポンスの高速化と密接なつながりがあるとは思いますが、それはいつかまた別の記事で。なにこれ面白い共有しよう→画面タップ、この間わずか数秒。いいね等のレスポンスが来るまで数分。この数分すら耐えられない子どもが増えています。

 教員はこれらのことが起こらないように、全力で止めにかかっています。しかし実際は、後始末ばかりしています。当事者を呼び、理由を聞き、謝罪をさせ、画像を消させ(不可能)、反省を促し、その後教室での様子を見守っていく。

 学校外で起こったことを、学校内で解決することは極めて難しく、このループは意味がとても薄い。とはいえ、せめて学校にいる間は落ち着いて教育が受けられるよう、環境を作るだけで精一杯です。

 となるとやはり、地域、ご家庭との連携や協力体制の確立が大変重要になってくるのです。お子さんをネットを通じた犯罪者にしないためには、スマホを買ったり、アプリをDLしたり、アカウントを作る前に、適切なルール作りが必要不可欠なのです。

 

家庭内での約束事

 では実際に私が担当するクラスで行っているアンケート結果に基づき、適切な利用を目的とした"家族とのルール"をいくつか紹介します。このルールがしっかりと守られている家庭の生徒は、加害者にも被害者にもなる可能性は極めて低くなります。

  • 22時〜7時の間は使用禁止
  • フィルタリング
  • 毎週末、親に見せる。ロックやパスワードはかけない。
  • 使い終わったらリビングに置いていく。
  • 自分の部屋では使わない。
  • 知らない人とやりとりを行わない。
  • 自分や他人の写真はアップロードしない。

 これらのルール作りは極めて重要で、子どもに拒否権はありません。これらを約束できないなら、買い与える必要はありません。むしろ、買い与えないでください。買い与えた後で「うるせえ」と拒否するなら、即座に解約してください。消去抵抗は起こるでしょうが、最後まで責任を取ってください。

 

これからスマホを買い与えようとしている保護者の方へ

  私が意識して"買ってあげる"ではなく"買い与える"といっているのは、この記事を読む保護者の方への注意喚起です。お金を払うのはあなたです。子どもを守るのはあなたです。スマートフォンは、ベビーシッターではありません。無責任に放置しないでください。

 中学生になっても、子どもは子どもです。判断能力は、あなたと同じほどありません。自分基準で考えないでください。「そんなこともわからないの?」は通じません。"そんなこともわからない"のです。良いこと悪いことは、教えなければわかりません。教えてあげてください。

 教えるのが難しければ教員に相談してください。"あなたが"お子さんを教え育むことを全力でサポートします。そして一緒に、お互い、責任を持って教育していきましょう。よろしくお願いします。